気ままな猫が溺愛中【完】

分かりました。




夏樹先輩に背中を押されて、間違いなく地面とこんにちはすると思い目をぎゅっと閉じたが、考えていた衝撃はなかった。


持っていた枝豆がクッションとなりふわっと温かいものに包まれる。


秋人が受け止めてくれたことを理解して、さっきまで怒っていたことを思い出し、体が固まる。


私がそんな状態であるにも関わらず、夏樹先輩は何か叫ぶとさっさと走って行ってしまった。


…夏樹先輩、私を犠牲にして逃げた。


漠然とそう感じながら、私は怒られるんだろうかと身を縮こませる。秋人の腕の中で、ぎゅっと枝豆の抱き枕を抱きしめていると、突然抱き枕を取り上げられる。


そして、秋人は私の腕を掴むと、マンションの入口をくぐって中に入っていく。エレベーターに乗り込み、無言のまま扉が開くのを待つ。


エレベーターが止まり、ドアが開くと再び引っ張られて部屋の前まできて止まる。鍵を差し入れてドアを開けると、私と枝豆の抱き枕を押し込んで、


「すぐ戻る。」


そう言ってドアの向こうに消えていった。ガチャンと鍵を閉めて。


…え、どうして鍵を閉めて行ったの?怒ってた…?


どうしよう。やっぱり昨日、態度おかしかったかな。それのことかな。夏樹先輩は話し合えって言ってたけど、どうしたらいいか分かんないよ。


枝豆を抱きかかえて、玄関でうずくまる。


すると、すぐにガチャリと音が聞こえて、ドアが開いて秋人が入ってきた。


私を見た秋人は驚いたように少し目を見開いた。そして、私を抱き上げ、靴を脱がせられたかと思うとそのまま部屋の中に歩いて行く。


そっとソファに降ろされて、横に座った秋人と向かい合うようにして座らせられる。


私は枝豆をきゅっと抱き締め、何を言われるのか身構えた。


「…はぁ。」


秋人は額に手を当てて下を向くと、小さくため息を吐き出した。


それにビクッとすると、


「…何でそんな可愛いかな。」


不機嫌そうに言われる。




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