気ままな猫が溺愛中【完】
…早く昼休みにならないかなぁ。
私は授業中、窓の外を眺めながらそんなことを考えていた。
というのも、今朝、秋人と一緒に登校したのだが、言うべきことが言えなかったのだ。
それは、秋人の分もお弁当を作ってきたっていう、何でもないことなんだけれど、ちょっと照れ臭くて言い出しにくかったのだ。
…あぁ~。どうして言えなかったんだろう。
言えたのは、
「…今日、お昼ご飯買わないでね!」
苦し紛れにそれだけ伝えて、逃げるように教室に入ったのだ。
きっと、秋人は首を傾げていたに違いない。
秋人に私の料理を食べてもらうのは、初めてではない。それなのに、いざお弁当を作って食べてもらうとなると、なかなか言い辛い。
だって別に、頼まれてもいないのだ。
もちろん、食べたいとも言われていない。
それだけに何だか言い辛くて、結局、意味の分からない言葉で秋人を困らせてしまっている。
ズーンと効果音がつきそうなほど落ち込んでいると、前に座っている由香が話しかけてきた。
「…ねぇ、さっきからどうしたわけ?」
見た目こそギャルだが、高校に入って初めてできた友達だ。今ではすごく仲が良い。
「…私って、可愛くない。」
そうつぶやき、しみじみと思い知っていると、
「…一体何があったのよ。何、先輩関係?」
見事に言い当てられる。
それにゆっくり頷くと、大きくため息を吐かれる。
「秋人の分もね、お弁当作ってきたんだ。でもそれを、朝言えなかったの…。」
簡単にそう説明すると、
「…え、それだけ?」
驚いたような、呆れたような声でそう言われた。
あらすじ
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総合ランキング2位獲得!(2017年06月)