Spiral【完】

─ 33.


異様に長く感じた現場滞在が一先ず終わる。

最上階のフランス料理店のシェフからの招待はメインディナーのお披露目だった。
奇しくもそれはクリスマスディナー。

しばらくぼんやりとその料理をみつめていた葵は、今なにを想っているのだろう。

明後日には正社員雇用の書類を提出しろと告げた俺に“わかりました”と答えた葵は、隣に並んで座っているのに。
一瞬、その存在を果てしなく遠く感じた。

「美味しいですね」

不意に微笑んだ葵の、そんな穏やかな表情をみるのは7年ぶりだ。

「楽しそうだな」

思わず目頭が熱くなるのを、溢れた笑みに隠す。

「シャンパンが美味しいって思えるようになりました」

葵が思い出しているのは、7年前のクリスマス。
俺たちが別れたあの日のことだ。


  • しおりをはさむ
  • 749
  • 11007
/ 450ページ
このページを編集する