Spiral【完】

─ 36.


陽が沈みかけた頃。
沢村主任に駒谷課長から連絡が入った。

そして今、私はまた駒谷課長の車でマンションにむかっている。
今朝、意を決して出てきた筈の折原さんの所有するあのマンション。
そこできっと、折原さんが待っている。

「心配しなくても、大丈夫だよ」

窓の外をみる余裕さえない私に、課長が声をかけてくれた。
それでも、私は苦しくて堪らない。
最後の別れが、この夜の夕闇みたいに迫ってくる。



断ったのだけれど。
結局、マンションの部屋の前まできちんと送られてしまった。

私の頭を、課長がぽんぽんと撫でる。
部屋のドアが開く音とともに、私の心臓もギクリと音をたてた。

「悪かったな」

折原さんの声に、鼓動が更に速くなる。

「ちゃんと渡したからな。もう、逃がすなよ」

「ああ。ありがとう」


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