Spiral【完】

─ 6.


事業部に移ってしばらくは仕事を覚えるのに必死だった。

慣れないデスクワークに手間取るのが申し訳ない。
さりげなくフォローを入れてくれる駒谷課長にも迷惑をかけたくなかった。


「野波さん! ランチ行かない?」

パソコンから顔をあげると、渡辺さんがにこにこしていた。

「あ、俺も行く!」

渡辺さんを押し退けるようにして、顔を出したのは同じ事業部の矢野さん。

「あ、はい」

声をかけてもらえることは嬉しい。
だけど、私は相変わらずこういう誘いに慣れられずにいた。

「ちょっとあんたたち。葵ちゃんは私とランチするのよ」

声をかけてくれたのは、沢村主任だった。
駒谷課長と同い年で、この春に産休から復帰して事業部の主任として働いている。

「行こうか、葵ちゃん」

「あ、はい」


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