蛍火 【完】

1.


営業部の活気を背に、私は会議資料のコピーをとっていた。

30枚ずつ50部のコピー。
なんとか午後の会議までには揃えられるだろう。
あとはコーヒーの準備か、と小さく息を吐く。

コピー機から一定のリズムで吐き出される資料をぼんやりとみていると、いつの間にか背後に誰かが立っていた。

「三上さんて、不毛なことしてますよね」

その声にはっとして振り向くと、そこには同じ営業部の望月くん。
彼はにっこりと微笑んでいた。

「……え?」

意味がわからず固まる私に距離をつめると、望月くんが囁いた。



「不倫なんて、楽しいですか?」



ざわざわとうるさかったオフィスの喧騒が、耳から遠ざかる。

思わず目を見開いてしまった私に、望月くんはさらに囁いた。


「今夜、あけておいてください」


0
  • しおりをはさむ
  • 102
  • 10993
/ 110ページ
このページを編集する