蛍火 【完】

2.


今はまだ。
新しい恋が少し怖いだけ。
今はただ。
新しい恋が少し面倒なだけ。

誰にともわからない言い訳をしているうちに。
気がつけば季節は、冬を迎えていた。



25歳になり、瞳子さんからはひたすら合コンに誘われた。
交際を申し込まれることもあった。
苦手だったその場のノリにも、流されたほうが楽だとわかって。
以前の自分が嘘みたいに合コンにも慣れた。

私は添田を忘れられたのだと思っていた。



年末恒例の本社の慰労会。
営業部の千葉さんに、久しぶりに話しかけられた。

「香弥ちゃん彼氏できたんだって?」

「あ、それ瞳子さんから聞いたんですか?」

ほろ酔いの千葉さんに苦笑して、私は否定も肯定もしなかった。

瞳子さんと千葉さんは私が添田と別れて少ししてから付き合い始めた。


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