蛍火 【完】

3.


蛍と過ごす時間は、身近に親しい友人のいない私にとって純粋に楽しかった。

仕事帰りに食事や飲みに行くのはもちろん、休日に映画を観に行ったり、水族館に行ったり。
絵に描いたような普通のデートがくすぐったくも、本音では嬉しかった。

暗闇をさ迷っていた私の前に、柔らかい光と、しかし確かな熱を称えて現れた蛍。
その小さく静かな光は私の醜態を浮き彫りにした。

しかし、どんなに醜く愚かだとわかっていても。
暗闇から抜け出すことはできなかった。

怖かった。
もう慣れきってしまった暗闇から踏み出すことが。
その先に、なにがあるのかを直視する勇気さえなかった。

暗闇に灯った光は眩しくて、私はじっと見惚れたまま、ただそこに立ち尽くしていたんだ。


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