蛍火 【完】

4.


初めて俺が彼女をみつけたのは、入社1年目の冬。
1月の寒い日だった。

いつものように雪が降っていて、俺は会社から出るとすぐにマフラーを鼻まであげた。
出身が長野だから雪には慣れているが、寒いものは寒い。

入社後、研修を経て配属されたのは北海道。
札幌支店の営業だった。

そつなく仕事にも慣れたし、職場環境も悪くない。
ただ、次回の転勤では暖かい土地に行ってみたい……と降りしきる雪の中で呑気に考えていた。

駅に向かう人の流れに、歩き出そうとしてふと足をとめる。
歩道の脇の植え込みに積もった雪の中に埋もれる、鮮やかな色。

薄いピンク色のコートに、焦げ茶色のブーツ。
そして赤いマフラーと手袋。
彼女は身を小さくして、そこに座っていた。


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