蛍火 【完】

5.


コピー機の前で、ぼんやりとしている三上さんの背後に近づく。

「三上さんて、不毛なことしてますよね?」

ビクッと肩をあげて、彼女は俺に振り返った。

嗚呼、やっぱり彼女は綺麗だ。

「不倫なんて楽しいですか?」

酷いことを言っている自覚はありつつも、とめられない。

「今夜、あけておいてください」

俺をみてください。
触れさせてください。
そして願わくは、笑ってください。

情けなくも、俺はそれを望むことしかできない。

社内メールで場所と時間を指定すると、彼女は了承をしてくれた。

勝負だ。
緊張を悟られないように、俺はその日ひたすら仕事をこなした。



「私になにが言いたいの?」

警戒心と苛立ちを隠そうともせず、俺を睨む三上さんを前に、平静を装う。


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