蛍火 【完】

6.


決算期を目前に、添田課長は広島支店へ移動になった。
役職もないただの平社員として。

時期外れな移動と明確な降格。
夫婦関係がどうなったのかまではわからないが、小沢常務の制裁はくだされたのだと理解した。



3月いっぱいで俺はこの会社を辞める。
出来る限り手を尽くして、香弥さんの実家まで行ってみたが、彼女の居場所はとうとうわからなかった。

今、香弥さんはどこにいるのだろう。
どうしているのだろう。

彼女がいないこと以外、なにも変わらないオフィスでも、ただ街中を歩いているだけでも、俺は香弥さんの面影を探す日々だった。

いつか、忘れられるかもしれない。
いつかは、思い出になるのかもしれない。
でもそれは、気が遠くなるほどずっとずっと先のことのように思えた。


俺は来週、長野に帰る。


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