華麗な野獣と愛人契約【完】

Footprints on the sands of time are not made by sitting down. /変わりたい


◆煌side




なれなれしく安寿にふれる男を見て、気がついたら体が動いていた。


あれ以上あそこにいたらどんな失態を犯していたか。



よくない傾向だな……



俺はこんなに押さえの利かない男だっただろうか。



情けなく思いながら豪徳寺家の門をくぐり車を停車させると、執事の塩塚が慌てたように駆け寄ってくるのが見えた。



車を降りて声を掛ける。




「塩塚」




彼は世津同様、長く豪徳寺につかえる人間だ。




「ぼっちゃま! いらっしゃるならいらっしゃると……!」

「連絡は離れのほうにしてる。顔を見たらすぐに帰る」

「それではお父様とお母様にはお会いにならないのですか?」

「向こうもとくに会いたいとは思ってないだろ」

「――」




彼の目に一瞬悲しげな光がともった。



俺は昔から世津にも、時々こんな目をさせていた。



成長しない自分が情けないやらなんやらで、ひどく居心地が悪くなった。





「――悪い。俺が会いたくないんだ」




そう言って、くるりと彼に背を向け離れへと向かう。




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