華麗な野獣と愛人契約【完】

Footprints on the sands of time are not made by sitting down. /嵐の中で


そこは世間の、いわゆる高級避暑地とはまた少し離れた秘密のような場所だった。




「ここが、別宅……?」




別宅というからごく普通の別荘を想像していたんだけれど、煌の「別宅」はゴシック様式の洋館で

手入れの行き届いた庭が、どこまでも続いている立派なお屋敷だった。




「きれい! 噴水がある……!」

「半径数キロは無人だぞ」




煌はクスクスと笑いながら車から降り、石造りの階段を上り玄関へと向かう。




すごい……

本当に、なんてきれいなんだろう。




玄関の前には二本の柱が立ち、それは複雑で美しい彫刻が施されていて、太陽の光をあび石の床に複雑な模様を作っている。



完璧に手入れされた庭に見惚れながら周囲をキョロキョロ見渡していると、



『ワフッ……!』



大きな獣の声がして。



声がしたほうを見ると、庭の向こうから茶色い何かがどんどん近づいてきて、煌にそのまま体当たりをするように飛びかかる。




「煌っ!?」




彼が襲われてしまったと。驚いて声をあげてしまった私。




「大丈夫だ!」

「で、でも……!」

「ティルダ!」




煌がケラケラと笑いながら、その茶色くて大きな生き物を抱え、撫で回す。



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