華麗な野獣と愛人契約【完】

Footprints on the sands of time are not made by sitting down. /真心をあなたに。


資料に一通り目を通したあと、プロジェクトチームに顔を出すために重役室を出た。



とりあえず今は、俺のやるべきことをしよう。


たとえお飾りだとしても、俺を頼りにしている部下がいる。チームがある。


そしていつか、Chanteの靴で幸せになれる女性がいるかもしれない。


誰かのために、そして自分のために、仕事に向き合おう。



このプロジェクトのリーダーは俺の直属の部下だ。


初の大仕事に異常なまでに燃えていると聞く。







「あ、副社長!」




廊下の向こうから、その、チームリーダー

顔を紅潮させた営業部の阪野(さかの)が駆け足で近づいてくるのが見えた。


どうやら向こうも向こうで、俺に用事があったらしい。


妙に興奮した顔をしている。




「阪野、走ると転ぶぞ」

「いやいや、そんないつも、うわあっ!」




手に持っていた資料を盛大にぶちまけながら、阪野が廊下に転がる。




「――」

「い、いったぁぁ……」




いい男だし、仕事面に関しては優秀なんだが、その他が絵に描いたようなドジだ。


Chanteに入社して四年、この廊下で100回は転んでいるだろう。




「相変わらずだな。どうして何もないところで転ぶんだ」




阪野は廊下にぶちまけた資料をかき集め、あははと笑う。




「僕も永遠の謎です」




ぺこっと頭を下げて立ち上がった。



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