君がいないと、僕は歌えない

◆出会いの春



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中学時代、お父さんが有名なバンドのベース弾きだってことを、私は頑なに隠して過ごしてきた。


地味なショートボブ。長い前髪に、顔を隠して。中一の頃から、誰とも仲良くなることもなく、ひっそりと生きてきた。


秋ごろになっても、クラスメイトの一部には名前を憶えられていないレベル。


目立ってガヤガヤやってるグループとは話したことすらない。







でも、それで良かった。


小学校の時にお父さんの素性がバレて、奇異の目で見られたことがあるからだ。


そこそこ名の知れたバンドに在籍しているお父さんは、時々テレビの音楽番組に出るような人だったから。私が彼の子供であることがバレた途端に、友達の態度がよそよそしくなってしまったんだ。


皆にとってもはや、私は”キョーコ”ではなくて”有名なバンドマンの子供”だった。


私は、私なのに。


お父さんが有名人ってだけで、色眼鏡で見られてしまう。それが、たまらなく嫌だった。


だから、中学ではわざと人と関わらないようにしていた。


”キョーコ”っていう自分を保つために。





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