君がいないと、僕は歌えない

スタンド・バイ・ミー

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11月、初旬。


創立以来欠かしたことがないという我が校の文化祭は、今年は例年以上の来校者で賑わっていた。


特に話題を呼んでいるのは、体育館で行われる地元三組のバンドによる対バンステージだ。


ラストに出てきたのは、この高校のスター的存在、奏とりょーちゃんと夏帆さんの”Re:Play”。


”Re:Play”の演奏前は全ての模擬店がもぬけの殻になり、体育館以外の場所が閑散とするほどの賑わいっぷりだった。






「きゃー、カナデくーーん!」


「りょうじぃぃぃぃー」


「夏帆ちゃんっ、マジかわいい!!!」






生徒達でひしめき合い、爆発しそうになっている体育館の中心に、奏はいた。


ブラックデニムにカーキ色のロングパーカー。薄茶色の癖がかった長い前髪。その隙間から覗く猫みたいな瞳は、今日はどことなく挑戦的な眼差しを浮かべている。


りょーちゃんは、今日も安定のりょーちゃんだった。白い歯を覗かせる爽やかスマイルに、女子だけでなく男子もくぎ付けだ。





私は一人、体育館の隅で皆の熱気を感じていた。


皆が、ステージにくぎ付けだから私のことなんて気づかない。







文化祭のライブは、好きだ。


勉強して、友達関係に悩んで。そんな切っても切れない学校生活に、私達はいつもがんじがらめだ。


その学校で、今日ライブがある。


朝礼の時、かったるい校長先生の話をしぶしぶ聞いてる体育館で、今日だけは思い思いに叫んではじけることが出来る。


この、他では味わえない特別感が好きだ。


開放的な空気が好きだ。






その中心に、奏はいる。


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