大人になる。

Story 3 /Side 日高 藍

彼が好きだ。彼の横顔を見上げてそう思った。バレるのが恥ずかしくてすぐに前を向いたけど。
あんなにうざいほど私に付き纏っていたのに急に来なくなった。そしたら別の女の子と話していた。
嫌だった。取られたくなかった。
気づきたくなかったのに。
でも、貴方があまりにも真っ直ぐで純粋な目をして言うから気付かされざるを得なかった。
この人を信じたくなった。


好きとは言えなかったけど、彼は私の気持ちを察するだけでそれ以上は何も言わなかった。
優しい。そんな彼に何も返せてない。今日だけでも彼からの好きを沢山貰った。今までもずっと。
一緒にいたいと言ってくれた。
少し下を向いて言葉にせずに口パクで唱える。
何故声にできないのだろう。何故素直になれないのだろう。
好き。好き。好き。好き…。
彼はきっと受け入れてくれると自分でも分かっているのに。
自分でも自分が面倒臭い。


大学から家までなんてそんなに時間が掛からなくて、あっという間だった。
結局何も言えなかった。
この繋いでいる手から全てが伝わればいいのに。


「じゃあ、また」


そう言って手を離して来た道を戻ろうとする彼の手をもう一度掴んだ。
まだもうちょっとこうしていたい。
私は俯いていて顔は見れないけど、多分彼は今驚いた顔をしていると思う。
自分でも驚いている。

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