PURPLE Ⅰ【完】

第2章 /所有印

家の静寂が心地いい。


ここには矢継ぎ早に質問を浴びせるクラスメイトも、必要以上に話しかけてくる人たちもいない。


「やっていける?」


思わず出てしまった弱音に自嘲してしまう。


彼ら特有の距離感がつかめない。


憂鬱のなか振動が着信を告げ。


「はい」


「朱織、学校どうだった?」


保さんからの問いに一瞬躊躇する。


でも今なら理解できる……彼は私の言葉を待っている。


「6年の長さを痛感した……」


「そうだな…少年を青年に変えるには十分すぎる長さだからな…」


「うん、知っているのに知らない人になっていて……」


「でもそれは蒼天も同じだろ?……いやアッチはそれ以上かもしれないぞ?」


「アオも?」


「そう。髪が短く男の子のようだった朱織が、急に女性になって目の前に現れたらビックリするっていうか……照れるだろ?」


「アオが?」


アオが照れる?


今日の流れを振り返っても……


やっぱり見当たらず。


「蒼天流の照れ隠しだろう」


照れ隠しねぇ……


「保さんは昔も今も変わらず素敵なパパだよね!」


『ぶぼっ』と受話器越しに咽る音が聞こえる。


「親をからかうな」


照れている保さんは、咽ながらも『明日戻るから』と電話を切った。


不思議と先程までの憂鬱さは消え、窓の外、青々とした庭に目をやりバスルームへと向かう。

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