PURPLE Ⅰ【完】

第1章 /お見合い当日① 着物

見合い当日は数日前の大雪が嘘のように穏やかに晴れ、暦の上では春だと立証される日となった。


着付けのために朝早く家を出る。


お見合いイコール着物の相関図が頭になかった私は、春らしいワンピースを用意していて。


ある日保さんが自宅に持ち帰った“着物”


素人の私からみても高級な着物だと一目瞭然で


「これどうしたの?レンタル?」


きっとそうだと思っていたのに


「これは花香(はなか)の着物なんだ」


驚愕の事実を突き付けてきた。


「ママ?」


「ああ、そうだ」


保さんは私を優しく見つめ、ママの成人式の為にわざわざ京都から呉服店を呼び付け、一から拵えた着物だと教えてくれた。


「ママの......」


指先でそっと触れた着物は、ひんやりと滑らかな手触りで私の心を打ち震わせる。


「結局、花香がこの着物に袖を通すことは無かったが...」


「.....」


「それでも娘のお前が着てくれるなら、着物も花香も喜ぶさ」


「似合うかな?」


「ああ、きっと似合う。嫁に出すのが嫌になるくらいにな」


お見合いのための着物なのに、なんだか矛盾するけれど


心底嬉しそうに笑う保さんを見ると、早くこの着物を着てみたいと思った。

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