PURPLE Ⅰ【完】

第1章 /*






── 保side ──










「はぁ... 」


優雅な音楽が流れるホテルのラウンジ。


温かく柔らかな日差しが差し込み、春の訪れに笑顔で談笑している他客。


一人溜息しかつけない自分が恨めしくなる。


ここまで来て何を躊躇っている。


情けない自分が顔を出す。


朱織はすでに覚悟を決めている


このコーヒーのように真黒く底の見えない世界に飛び込む覚悟を……


いや…違うな


朱織は暗闇の世界をさ迷っている。それに気付かない振りをしていただけなんだ。


表の世界の、うんと輝いている場所に立たせることであの子の闇が薄くなるんじゃないかと、誘われるまま朱織をモデル事務所に入れて。


あの子が“カリスマモデル”と呼ばれるまでに時間はそう掛からなかった。


売れっ子モデル、超一流の学校。


待つのは明るい未来。


普通の人が羨む人生を歩いているのに、それに比例するかのように朱織の影が深くなっていく。


「はぁ...」


好きなコーヒーが急に忌々しく感じ、ミルクに手をのばした。


真黒の液体に真っ白なミルクが落ちると途端に白濁色に変化して、それを見て少しホッとすると、そろそろ着付けも終わる頃だろうと席を立った。







──close──



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