PURPLE Ⅰ【完】

第3章 /親戚のお兄さん

「もう一軒行くわよ~」


ろれつの回っていない響子さんの叫び声が、狭い路地裏にこだまする。


「響子さん飲み過ぎだよ。そろそろ帰ろうよ」


「なに言ってんのよRot。夜はまだこれからだよ!ねっクマ?」


付き合いきれないという態度の私を無視して、呼び名の通りクマのような大男、カメラマンのクマさんに声をかける。


「おうよ!まだまだ飲み足りねえぞ響子」


『ガッハッハッ』と雄叫びあげて、響子さんと2人上機嫌を通り越したテンションで先を歩く。


今日の撮影は、この街のベイサイドエリアで行われ


撮影はお天気の下、無事に終えたけれど


......響子さんとクマさんに捕まり。


撮影場所が自宅マンションから近い場所だけに、隼を断り、響子さんに送迎を頼んでいたので


『迎えが来ているから』と誤魔化して帰る事も出来ず。


「おっし響子。次はオレの知り合いの店に行こう」


「おっし、任せたクマ」


朝まで付き合う覚悟をして、周辺に目を向ける。


アンダーグラウンド


引越した翌日に入り込んだ路地裏。


どんよりとジメジメしているのは、昨日雨が降っていたせいではなく。


ジロジロと人を値踏みする男たちの視線が纏わりつく。


どこかで女性の籠ったような叫び声が聞こえるのも幻聴ではなく


焦点の合わない醜い笑い声が、路地の異臭とともに鼻に付く。





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