PURPLE Ⅰ【完】

第3章 /名前

誰もいない。


許可なく3階へと上がり込む身勝手を詫びようと


でも、その3階には客も従業員すら見当たらず。


雑然とした下のフロアーとは異なり、洗練された落ち着きのあるバーのようで、


無人の広い空間はライトダウンされ、壁に掛かった巨大なスクリーンには古いフランス映画が無音声で流れていた。


「しゅーちゃんカクテルでいい?」


すでに右京さんはシェイカーを手に取っていて


「右京さん、カウンターに入って大丈夫ですか?」


「んっ?大丈夫だよ。座って」


妖艶に微笑みシェイカーを振る右京さんからは、先程の姿は想像できず。


ぼんやりと見つめていれば


「ちゅっ」


唇に柔らかいものが触れて


「なっ!?」


「えーだって上目遣いでボクをじっと見て…キスしてほしいのかな?って」


「ちっ違います」


慌てる私が可笑しいのか笑いだし


「えー違うの?じゃあボクがしゅーちゃんにキスしたくなっちゃったのかな?」


かな?って聞かれても……


「へー京悟に言ってやろう」


その意地の悪い声で振り向けば


「隼」


天敵様が立っていて


「しゅーちゃんと舌絡ませてキスしていたって言っておいて」


おい、こら右京。


「ああ、上に跨って腰振っていたって言っておく」


どこまで冗談なのか掴めない。


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