PURPLE Ⅰ【完】

ミラー越しに由利と視線が合うと、あいつは珍しく表情を崩し


「若、ヤキモチですか?最近忙しくて朱織殿にお会いしてしませんからね」


「おい」


「自分の場合は妹のような、そんな感じですね」


「……」


「なにか心配事でも?」


工場地帯を走る車は無機質な建物が建ち並び、どこか異空間に迷い込んだ錯覚をおこす。


「不思議に思わねえか?」


「何がですか?」


「どうして会長は今になって朱織に構う」


「……」


「あの日……退院祝いの日に、確かに朱織は『会長に捨てられた』とそう言った。
それが本当だとすれば、捨てた孫を何故オヤジに預けた」


そもそも蒼天だけ引き取ったこと事態しっくりとこねえ。


「会長の考えはわかりませんが…」


「が?」


「以前に女将さんが、朱織殿は会長のお嬢さんと似ていると……だとしたら娘に似てきた朱織殿を近くに置きたくなったのでは?」


「……」


藤崎会長の娘に対する激愛っぷりは有名だったらしい。


目に入れても痛くない娘が、どこの馬の骨ともわからない男の子供を身ごもり海外へ逃亡。


見つけた時には、もう死んでいた。


その腸が煮え繰り返る怒りや鬱積を、女である朱織にぶつけ一度は拒否したものの


段々娘に似てくる孫娘が可愛くなって……


その可能性も一理ある。


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