PURPLE Ⅰ【完】

「朱織」


保さんに心配そうに声を掛けられ、長い間囚われた時間もほんの一瞬だったと気が付き


もう一度彼に目を向けると、先ほどと違って穏やかな表情で『どうぞ』と席を促された。


正座も覚悟していたけれど、畳敷きにテーブルとイスが用意されていてホッとして席に座る。


「こういった席には世話人を添えるべきだろうが.....まあ今日は堅っ苦しいことは抜きにして楽しく食事でもしようじゃねえか、オイ!!」


お見合い相手の隣に座る、年配の男性が合図をすると同時に用意される飲み物。


『乾杯!』──始まったお見合い。


真っ先に口を開いたのはお見合い相手の彼で


「はじめまして。 一之瀬 京悟(けいご)です。隣に座る父である組長の下、一之瀬組若頭を務めています。それにしても今日の着物よく似合っていますね」


そう微笑みながら話をする彼は、やっぱり第一印象とは程遠い優しい口調で


『ああ、本当によく似合ってる』と隣に座る、父親だと紹介された年配の男性が相槌を打つ。


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