PURPLE Ⅰ【完】

「朱織。オレは東日本統括本部長になった。今まで以上に忙しくなるし敵も増える」


「……」


彼にどう声をかければよいのだろう?


関東地区長補佐からしたら出世だけれど


京悟さんは眉根に皺を寄せ考え込む私の頭をゆるりとなで


「どうした?」


何一つ見逃さない瞳を向ける。


「いえ……」


「…………」


どうやら言わなければいけないらしい。


お父さんもお母さんも食い入り真意を図っている。


「わからなくて…」


「……」


「京悟さんに『おめでとう』と声をかければよいのか。『がんばって』も違うような。
私が何かを口にすることは、京悟さんのプライドを傷つけませんか?」


目を大きく広げ驚いたのは一瞬で。


「気にしちゃいねえ。
確かにお前のお陰なのは歪めねが……それがどうした?
この地位を守るのは、オレ自身だ。
無能な奴のメッキは簡単に剥がされ、泥沼に落ち悶え死ぬしかねえ」


その瞳に赤く黒い炎の陰影がみえ息をのむ。


それでも私の頭を撫で髪で遊ぶ彼の手は優しく。


「変な気をまわして、ごめんなさい。
本部長就任おめでとうございます」


そう頭を下げる私に


「ちがう」


ダメだしをした。


「……」


「さみしいだ」


「はい?」


京悟さんは『忙しくなって会えなくなるから寂しいがいい』と二ヤリ口角を上げる


「ほら、今日にでも孫孕みそうじゃないかい」


「だからオフクロ、今ガキ孕んだら高校」


──…もうその件はいいから……





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