PURPLE Ⅰ【完】

第2章 /実弟

『食事の用意ができました』由利さんの声で案内された部屋。


刺すような視線に入室する足を止める。


先には、私を冷めた瞳で権高く見下す一人の男。


気まずさの中近寄り『初めまして高木朱織です』の挨拶に、無言で目も合わせてはくれない。


「隼、お客様にその態度はなんだい?」


お母さんの一声に『チッ』と舌打ちをして


「一之瀬 隼(はやと)」


ダルそうに、それだけを横を向いたまま答えた。


どうやら一番下の弟さんには気に入られていないどころか、私の存在自体が鬱陶しいらしく。


『朱織、こっちに座れ』と京悟さんに呼ばれ隣の席へと向かう後ろからは、また『チッ』と舌打ちが聞こえ。


「隼、何が気に入らねえ。女みてえにグジグジと......ハッキリしろや!!」

まくしたてるお父さんの罵声に緊張が走る。


「だったら言わせてもらうが…
オヤジ、弁護士先生とやらに弱みでも握られてんのか?」


「なに?」


この場をお父さんに任せているのか、京悟さんは瞼を閉じ黙っている。


「なきゃ、たかが弁護士の娘が兄貴と結婚すんの可笑しいだろ!」


怒りをぶつける弟の彼は、やはり京悟さんとよく似た見惚れるほどの完璧な顔立ちで。


同年代の男子とは、比べようのない色気と存在感を放っている。


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