お女ヤン!!8【完】

★8 /駆け引きの部屋







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大きく開いたバルコニーの窓から遠慮なく入り込んでくる、バラの香りが鼻孔をつく。




甘くむせかえるような香りは吸い込めば、胸がいっぱいになると同時にお腹も満たされる。




でも、千里は満足できないらしい。




隙間なく磨かれたバルコニーの白い手すりに背をつけ、ゆるく腕を組む千里は、部屋の中央で立ちすくむあたしを見つめてる。





久しぶりに見たな、その黒い瞳。千春のあの濁った黒い瞳を見た直後に見る千里の目、眩しすぎるよ本当。


眩しくて瞼を閉じたい。



できる事なら今、すぐに。





「なんでココにいるの。千里」

「迷子になった」

「………千里」




ふざけてる場合じゃない事ぐらい、わかるでしょうに。




ココはあの街じゃない。

南高校でも、白百合でもない。


どこでもないし。
なにもない。



「……だから、オマエに会いにきた」

「どうやってこの場所調べたの」




明確に言わなきゃ答えてくれないのか、オマエは。



あたしはバイオリンを持った手をぶらりと下げたまま、千里を眺めた。


だけど千里はあたしの問いかけよりも、あたしの持っている宝物に目を向けてやけに紅い唇を開く。



白い肌に紅い唇。

千里、なんだか白雪姫みたいだね。





「もう弾かねえのか」

「え、ちょっと聴いてたの今の!?」

「聴いてた」

「最悪なんですけど!」



嘘でしょ!それは聞き捨てならない!今の演奏を千里に聴かれていたなんて………ぎゃあああああ!恥ずかしすぎる事この上ない。屍になりたい。


でもこんなところで取り乱しても困る。そう、平常心をたもつのよミホ。暖かな毛布のような気持ちで千里の発言を優しくくるみ、平常心を―――――――、




「よかった」



千里が視線をあたしからそらせて、言葉を奏でた。



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