お女ヤン!!8【完】

★8 /放っておけない






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「オマエがどうしようもなく好きだから殴った」

「………」




自分の胸の奥底に埋めていて、気付かないフリをしていたのに。



この土壇場で千里にそれを掘り起こされてしまった。


あたしは千里が言った言葉を口に出さず、頭の中だけで反芻してみる。





やっぱり、苦しい。

苦しくて、苦しくて、辛かった。




乱れた髪をかきわける。ゆるい形状を描く自分の髪の隙間から、千里があたしを射抜いてる。



そのわずかな隙間から見える千里を見ただけで、胸がチクリと痛んだ。




そうか、これが世の乙女たちが抱える恋心ってやつだったのか。不思議だ。自分の中にそんなものが生まれていたなんて本当に不思議。




だけどこの苦しさをずっと抱えていくのは嫌だ。



この恋をずっと抱えていく事ができない事を、あたしは知ってる。




だって“恋”って、片想いや両想い、忍ぶ恋とか、いろいろ種類があるんでしょ。





ダメな恋だったり、
いい恋だったり、
望みがある恋だったり、
始まる前に既に終わってる恋だったり、








「千里、それって錯覚だと思う」




錯覚の、恋だったり。





「錯覚起こすほど、バカじゃない」




不満そうに千里が言う。はてさて、そうかな、ちーさん。あたしはかぶりを振った。




さっきまで取り乱していた自分を思い出す。あんなに自分の事で熱くなって我を忘れるようじゃ、これから先の現実と向き合えない。



そんな熱を抱えていけるほど、これから先のあたしの人生は甘くない。





「錯覚だよ、千里」




絨毯の上につま先をのせて、ゆっくりと踵を落してベッドから下りた。



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