お女ヤン!!8【完】

★8 /千の春と一の秋












じゃあ、
どんな一言を
言えばよかったんだ。






――――――――――――――――――――――――――――………





唐突に、それは言われた。








「――――――――千春、お母さんと今から出掛けない?」





居間でテレビを見ていたら、キッチンの流し台の前で食器を洗っている母親に笑顔でそう言われた。



自分のテーブル前には食べかけのケーキがある。9歳になった俺に、仕事帰りに母さんが買ってきたショートケーキ。



赤い苺がまだ上に残ってる。一口かじってみたけど甘酸っぱいというよりは酸っぱい。舌先が痛く痺れる。




「今から?」




テレビ番組を見ながら首を傾げて俺は母親に聞く。



いつも適当に見ているバラエティ番組、これは9時から10時まで入る。


番組は既に中間を過ぎた。


時計も確認してみる。



時刻は午後9時40分を回っていた。






「今から出かけるの、遅くない?」



俺の問いかけに、水道の蛇口をぎゅっとひねった母さんは笑顔で首を振る。






「遅いけど、今すぐにがいいの」






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