お女ヤン!!8【完】





着ているツナギについていた、洒落た柄のワッペンをなぞる。



ヤスのところで働いてしばらくたつけど、未だにこの古着の良さがわからない。店の中は目がチカチカするし。


まあ、着れるならなんでもいいか。




遥か上のシャンデリアの装飾1つ1つに灯りがともってる。まるで蛍みたいじゃないか。



もう、この時期には見る事が出来ないけど。




「慎重に行動するよう、お願いします。庄司様」




と、真剣味を言葉に添えつけた声色で斉藤に注意された。俺、なんでこんなに信用がないのか不思議だな。




「動いてるよ、慎重に」

「ならいいんですけど」



動いてるさ慎重に。


なにせ、何が起きるかわからないんだから。




「そっちも油断しないでくれよ。ここにいるからっていって、安全とは限らないんだから……まあ、わからないとは思うけど」

「庄司様。見てほしいものがあるんですけど」

「なんだよ急に」




あちち。しかしこの紅茶熱いな。カップの中を深くのぞき込み、冷たい息を吹きかけながら問い掛け直す。



「なに、見せたいものって…あっち」

「ああ、申し訳ありません。猫舌なんですね。新しいの、いれましょうか」

「斉藤の家の奴にそんな事させられねえよ」

「今更でしょう」



そうかもしれない。綾瀬より斉藤の方が上だ。だけど俺、紅茶の入れ方とかよくわかんないんだよな。



いつも佐々木のおばちゃんに、持ってきてもらってっからなー。




「そう思うと、オマエって凄いよね。なんでも出来て」

「あなたが言うと嫌みに聞こえますね」

「うん、嫌みだもん」

「……」

「……」




お、沈黙になった、これは面白い。斉藤も沈黙を作るのか。まあ、コイツだって人間だしなサイボーグじゃない。



最初と変わらず、俺はあまり好きじゃないけど。

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