お女ヤン!!8【完】

★8 /決断二重奏







「…さすがに今日は動いてこなかったか」



着なれない上等なスーツの上を肩にかけ、俺の生涯には一生関わりがなさそうな建物の中を歩く。



途中、警察手帳を落としたのに気がついてUターンした以外は、この場からあまり動いてない。



口が寂しい。

思い、タバコを吸おうと手を伸ばした時だった。


警備員らしき奴等数人が、足音やかましく3階の階段から下りてきた。なんだ、うるせえな。




「すみません。招待者の方ですか?」



そしてこれだよ。足止め喰らっちまったよ。元来この顔のせいでいい印象を持たれた事はないが、更にこんな場所だと拍車をかけてマイナスポイントらしい。


面倒ったらありゃしねえな。



「そうですが」

「お名前よろしいですか」

「田中太郎」

「………」

「あ」



しまった。

つい面倒で適当な名前を言っちまった。くそ、だからこういう洒落たところは嫌いなんだよ。




目の前の警備員数人が顎を引いて、けったいな視線を向けてくる。あー、めんどくせえ。いっその事警察手帳見せちまうか。


いや、だけどこの様子だと。それすらも怪しいと思われそうだ。



さて、どうしたもんか。仕方なしに、というかやっぱり口が寂しくてタバコをくわえる。



と、それが最後の一手になったらしい。


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