お女ヤン!!8【完】

番外編 /開かないカーテン









ほのぼのとして。
だけどどこか虚ろな哀愁がその日、藤井の家には漂っていた。



それをどことなく全員が感じていたけれど、南中学校から帰宅した藤井家の次男はくしくもそれには気がつかなかったらしい。





「あ、純さん!」

「ああ、帰ったのか凪」

「うっす!帰ってきました。ただいまっす」

「遅かったな」

「補習でした!」

「えばって言うもんじゃねェだろうよ。中学ぐらいは問題なく卒業しろよ」

「純さんがそういうなら俺はそうしますよ」



他人にはいつでもツンとしてからかう態度ばかりを見せている彼も、家の前で黒塗りの車に乗り込む父親に会えばころりと態度を変えるらしい。


いや、変えるというよりは完全なる別人である。




中学校の学ランを適当に着、どこにいても目立つ金色の髪にピアス。鞄を振り回す様はただのやんちゃな中坊だ。


ただし、中身はやんちゃであらわすには少々足りないが。




「どっか行くんすか?」



スーツに身をまとう父親に駆け寄る凪。


世間から恐れられている藤井組の2代目はそんな息子を見て、後部座席に乗り込もうとしていた行動を1度止めた。


恐ろしく整った顔。涼やかな瞳は一瞬宙をさまよった。なにか、考えているらしい。



その隙に、凪は質問を投げかける。
よほど父親に会えたのが嬉しかったらしい。



「……邪魔じゃなかったら、俺もついていっていいっすか?」



ひゅう、と軽い口笛を吹いて凪が顔の前で両手を合わせる。


兄の(兄っつうかただのド天然だけどな)千里が父親の仕事についていく事はよくあるが、自分がそれについていく事はあまりない。


ついていっていいですか、と聞く事もなんとなくためらわれる。一応“養子”のポジションにいるがゆえに、でしゃばる事はあまりしたくなかった。


藤井の家の連中は全員、自分とその双子の妹が養子だという概念はとっくのまに捨てているようだが。






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