お女ヤン!!8【完】

★8 /続・与四郎さん奮闘記








―――――――――千里が屋敷にくる1週間前。南高校、とある教室内。






***




「沢田」

「……」

「沢田、」

「………」

「……沢田与四郎!」

「……あ。はい!」





教師から自分のフルネームを呼ばれて、俺は窓から視線を教壇の前へと素早く移動させた。




自分でも気がつかなかった。随分長い間、ぼけっとしてたらしい。






「沢田ー」



俺と視線が合った教師が、やや不機嫌そうな顔を作る。




「補習中だっての余裕だな」

「すんません」

「テストの結果いいからって気を抜くなよー」

「はい」





……気を抜いてたわけじゃねえんだけどな。




曖昧に笑いながら、自分の席の隣に立った教師が持つテスト用紙を受け取った。



93と書かれた点数を一瞬だけ視界に入れる。






「この夏休みに補習受けるほど成績悪くないのになぁ。沢田は」

「俺の場合、出席の問題ですからね」

「自分でわかってるなら普段からしっかり登校しなさい」

「はは」




正論を更に押し込まれる。


いや、俺はしっかり登校してる。ただヤンチャな後輩たちに授業妨害されて、授業を受けれねえだけだ。




出席日数さえ基準値に達していれば夏休みにこうして学校にきて、補習を受ける事もなかったんだけどな。



俺は嘆息しながらまた、窓ガラスに視線を転じた。



しかし来週から9月だっつうのにまだ猛暑か。




いつもはそこまで開けないワイシャツのボタンを1つ余分に外す。




『あっついよねー』
『夏休み後半に補習とか無理』
『早く帰んねえと。俺バイト入ってんだよなー今日』




教室には俺の他に数人の生徒がいる。ソイツらのやる気はこの蒸し暑さで全て削がれちまったらしい。




「こら、ぼやくな。先生も早く帰りたいんだ」




教師が本音を吐きながら、小テストの結果を返していく。




俺はもう1度、さっき渡されたテスト結果“93点”を思い出した。




この点数だと、卒業まで出席日数と成績を落とさなけりゃ俺もようやく高校を卒業できるな。




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