ナマケモノに夜《完》

第2話 手にとるように死ね /誰からも笑われる友人の作り方




遠山と初めて言葉を交わしたのは小学校3年生の時、学校の男子トイレでの事だった。



当時の俺は「遠山」という奴が同じ学年にいる事は知っていたけど、喋った事もないし、同じクラスになった事もない。


家が近所な訳でもないので、トイレという狭い空間の中にいるにも関わらず声をかける訳がなかった。



「めーちゃん、肩パンしようぜ」


しかし何を思ったのか、遠山は俺に喋りかけてきた。しかも第一声がそれだった。


はたして初対面の相手に「肩パンしようぜ」なんて言えるだろうか。いや、言えない。



しかもトイレの中で、コイツ何言ってんだ。



「嫌だよ、痛い」


勿論小学校3年生の俺は断った。なんで仲良くもない奴と肩パンなんかしなくちゃいけないんだよ。



「なんだ、つまらんのう。お主」

「……」

「なあ、めーちゃん。今日の給食揚げパンでるらしいよ」

「おい」



俺は友好的態度は一切とらずに腹の底から低い声を出した。


手を洗っている最中だったので、蛇口をひねって水を止める。



「“めーちゃん”って何だよ。変なあだ名つけんな」


きゅ。
蛇口のしまる音。



「だってオマエ“芽衣”って言うんでしょ。4組の櫛引芽衣。だから、めーちゃん」

「そうだけど。めーちゃんって、女みたいじゃん」

「大丈夫。さっき見たけど、ついてるじゃん」



そりゃ男だもん、ついてるだろうよ。つうか、人の勝手に見んなよ。



俺は何となく自分の大事な部分をさっと手で隠した。それを見ていた奴は、何を思ったのか大笑いし始めた。


うるせー奴と俺は思ったけどその日から、遠山と俺はなぜだか友達になった。



男同士の友情の始まりとは、女子と違ってよくわからないものである。


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