ナマケモノに夜《完》





さて。


遠山が言っていた通り、俺の名前は『櫛引芽衣(くしびきめい)』という。


名前をつけたのは俺の親父で、なんでこんな女みたいな名前をつけたのか疑問だけど親父が極度の女好きだからだ、と俺は思ってる。



好きあらば、女のケツばかり追いかけていて「いいよ、マリアちゃん」「遥ちゃん、すげぇ可愛い」褒め言葉連発の、どうしよ~~もない父親なのだ。



そんな家族を嫌ってはいないけど。

だけど「いい大人のくせして、なにやってんだヒゲ」的な事はたまに思う。


仕事ではなく、主に私生活で。


そのせいか本来ならば純粋無垢なはずの小学生時代。俺はやや排他的態度で学校生活を送っていた。


無論友達はあまりいない。


イジメを受けている訳でも、昼休みのドッジボールに誘ってもらえない訳でもない。だけど少し浮いている。

そんなポジション。


その俺に、「肩パンしようぜ!」と声をかけてきたのが遠山だった。


とにかく遠山は、俺とは対岸にいる人間だった。


男目から見ても遠山は中々格好よく、足も速くて人気者。ナルシストな部分は一切なく、全力で笑いをとりにいけるような奴。


喧嘩真っただ中の奴を見つけると、


「ご両人、まあまあこれでひとつ穏便に」


と、自分の大事にしている遊戯王カードを差し出してその場を収めたりしていた。(その後、俺のところ来て「めーちゃん、俺ぁ今日大事な親友を2枚なくしちまったぜ」と言いにくるのは、やめていただきたい)


ちなみにこれは、遠山が小学校5年生の時の話である。




学校の健康診断の時、明らかに太った女子がクラスにいてその女子が体重計に乗った瞬間、全員でこっそり何キロあるのか覗こうとすれば、「おっと足がすべったー」とか言って、自分も太った女子と一緒に体重計に乗るだとか。



(その後遠山は、その女子に「セクハラよ!」とあらぬ文句をつけられた)とにかく、遠山は本当にいい奴だった。



その遠山がどうして俺みたいな根暗に声をかけてきたかは分からないが、俺たちは小学校を卒業した後、同じ中学に入学し、同じ部活に入部しそして今。




同じ高校に入っても何の縁だか親友だった。



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