ナマケモノに夜《完》

第2話 手にとるように死ね /誰からも好まれるマドンナをGETした男への嫉妬






「あれ、俺のズボンない!鞄の中にいれておいたのに」

「オマエが今着てるソレはなんなんだよ」




部活が終わっった後のサッカー部、部室内での事である。



遠山がロッカーの中に顔を突っ込みながら、急いた声を出したて自分の制服のズボンが、ない、ない!と騒いでいた。



「まーた、遠山かよ」先輩と同級生から笑い声があがる。



本当だよ。まーた遠山だよ。
俺は眉間に皺をよせる。



「お。なんだもう履いてた」


俺の指摘を聞いた遠山は、片腕にワイシャツをひっかけたまま、自分の足を見て舌を出した。うわぁ、気持ち悪い。


男子高校生の舌ペロなんて、気色悪い以上になにものでもない。



「お疲れさまっす」



部室の中でだべっている先輩達に頭を下げた俺は、泥だらけのジャージのまま先に部室を出た。


スポーツバッグの肩ベルトが肩にぎちぎちと食い込んで痛い。



先月から教室に置き勉をした生徒は、ペナルティとして地域清掃に強制参加する事になったのだ。



だから今、俺のスポーツバッグの中には今日の授業分の教科書がみっちり入っている事になる。




「めーちゃん、今日お泊まりしたくなぁい?」

「女子高生か、オマエは」



俺の後を追ってきた遠山が自転車に乗って追いついてきたのは、俺が部室を出て3分ぐらい後の事だった。


自転車のカゴに入ってる遠山の鞄は、俺の鞄と比べて軽い。


遠山はずる賢いので授業道具は部室に置いている。まあ、他の人も殆どそうだけど。



「勇人と翔平と、敦達にも声かけようか」

「いいねー。めーちゃん、3人にメール打っといて。あ、酒も買ってくるように言っといてな」

「俺、今月金ない」



今月は親父の仕事の手伝いをしなかったので、財布の中には400円しかない。



俺が言うと、遠山は「勇人、昨日バイト代出たって言ってから多くだしてくれるだろ」言いつつ自分の財布の中を確認し始めた。



俺はその自転車の荷台に乗って、切っていた携帯の電源をいれた。



えーっと、『今日。俺の家で泊まりしなぁい?』でいいかメールの本文は。件名に『アルコール求む』を打って、クラスメートの3人にメールを一斉送信する。



既に辺りは暗く、遠山のつけている洒落たジーショックで時刻を確認すると、もう午後8時30分になっていた。


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