ナマケモノに夜《完》
第2話 手にとるように死ね /誰からも慰められないステーキ
遠山が佳織先輩と別れたのは、夏休みの中盤頃だった。
外で鳴く蝉の鳴き声が夢の中まで響いて眠れない俺は、ジャージの半ズボンだけを履いて、布団の上で何度も寝返りを打っていた。
あづい。
暑い。
あづい。
アイツ等もうちょっとで死ぬからって、他人の睡眠時間を全力で削るこたぁないのに。
しかも今日は親父の仕事を2度程手伝い、疲れているのに。俺はそれから30分程寝苦しさを体感していた。
その後、ようやく睡魔が襲ってきていよいよ眠れるな、と確信し始めた時である。
遠山クソ野郎から着信がきたのは。
《めーちゃん、佳織野郎が浮気したぜ》
あっけらかんとした声だった。
俺は携帯に耳をあずけたまま、机の上に置いてある目覚まし時計を見た。でもよく見えない。
次は携帯で時間を見る。
「おい、今の時間は何時だ。言ってみろ遠山くん」
《2時46分です。はい》
「親しき中にも礼儀というものがあってだね、君」
《それが小学校からの親友にいうセリフか!白状もの、神経質!佳織先輩にふられたんだぞ俺は!しかもつい15分前ラブホで!ヤッタすぐ後に「ごめん別れて」って!》
「神経質」ではなく「無神経」と言いたかったんだろうが突っ込むのも面倒だ。つうか、ヤッた直後に電話かけてくんな。
あらすじ
総合ランキング99位獲得!(2012年11月)
恋が、コワレタ。
http://s.maho.jp/homepage/2de788i2a4d40ea8/