ナマケモノに夜《完》

第2話 手にとるように死ね /誰から見てもマフラーの編み目は酷い






遠山が、遠山の家族らしき人達と出かけているとこを見かけたのは、数ヶ月後のクリスマスの事だった。




俺はその時彼女を駅まで送っていった帰りで、父親にケンタッキーのチキンでも買っていってやろうかなと珍しく優しい子供心を働かせていた。



多分、クリスマスの気分がそうさせていたんだと思う。




その途中、遠山が、遠山の父親と母親と、兄と妹……家族4人の最後尾をのろのろと歩いているのを見かけた。




遠山は黒いニット帽に、やや薄手の上着を羽織っていた。



遠山の前には、優しそうな男の人と、可愛らしい女の子が手を繋いで歩いている。更にその前方には、父親と母親らしき人達が大きな買い物袋を持って歩いている。




しかし、どうして遠山は家族と距離をとって歩いているのだろうか?




遠山の性格なら、家族仲は頗る良さそうな気がするけど。学校でもそうなように、家族の中心にいそうな気もするけれど。




そういえば……小学校から一緒だが、遠山から遠山の家族の話を聞く機会はあまりなかったように思える。




父と母、兄と妹の5人家族だとは知っているけれど。



そこで遠山は突然、顔をバッと俺の方に向けてきた。やばい、気付かれた。


野生児か己は。




遠山は俺を見て、気まずそう……な表情は浮かべずに、




「めーちゃーん!メリークリスマス!」



1年ぶりに彦星に会えて嬉しいとはしゃぐ織姫のように両手をブンブン振って、俺がいる歩道とは反対の歩道から声をあげた。



なんて奴だ。


アイツに羞恥というもんはないのか。




なんだか急に、冷たい感情がむわっと湧き起こった。むかむかする。油の塊を呑み込んだ感じだ。




俺は彼女からクリスマスプレゼントに貰った手編みのマフラーを首に巻いて、大声をあげる遠山を無視してその場を立ち去った。




なんだろう、この気持ちは。



何かを怒鳴りつけてやりたい気分だ。誰か嫌いな奴でも通らないかな。



佳織先輩が今、俺の目の前に現れたらいいのに。


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