♥の女王と冷たい番犬

game 2








  

♦︎そのハードなミッションは、会社で共に働く曽根崎さんから言い渡された♦︎












「ユッキーお願い!藤堂さんに今彼女いるか聞いてみて!」

「ぶほぉっ!!」

「やだ、ユッキー汚いなぁもう」

「ご、ごめんなさ……。げほっ」




 突然の発言に驚いた俺はひとまず胸をさすって呼吸を整えた。



 会社近くにある店内はランチ時だけあって混雑していて、周囲にいる客は怪訝そうに俺を見ている。俺は「ソーリーソーリー」とぎこちない英語で謝りながら、向かいに座る曽根崎さんに「無理ですよ」と告げた。





「それに念のため聞いておくけど藤堂さんって、あの、“藤堂さん”ですよね?」

「そう。綾瀬社長の秘書で、イケメンで、細くて、白くて、黒髪で、ユッキーの顔面レベルが60だとしたら、120までレベル振り切っちゃってる藤堂さんのこと」

「え、嬉しい……俺の顔面レベルって60もあるんですか?」




 トゥンク……ってこれは喜ぶべきなのか否か。俺は作ろうとしていた笑顔をやめて、「うーんうーん」と唸った。



 曽根崎さんは目を輝かせながら「お願い!だって藤堂さん、喋りかけにくいんだもん!それに先輩から頼まれててさぁ」と目の前で両手をこすり合わせている。曽根崎さん、それを言ったら俺だって同じだよ。つうか、うちの会社で藤堂さんに気安く喋りかけられるのって社長綾ぐらいだよ。





「とにかく俺には無理ですよ。そもそもフロアだって違うし」

「大丈夫だよ、それにユッキーって天然だから何事も物怖じしないじゃない?」

「失礼な、天然じゃないですよ!」




 俺はキッと眉を吊り上げて抗議した。




「じゃあせめて情報!藤堂さん情報、なんでもいいから1日1個私にちょうだい!それにもしこのミッション受けてくれるなら、何でも言うこと聞いてあげるから!」

「な、なんでも!?」




 注文したベーグルの最後を口の中に放り込んで、目の前で腕を交差させてバツを作りかけていた俺は曽根崎さんの言葉に、ガタリと腰を浮かした。




 なんでも、そっか。
 なんでも言うことを聞いてくれるのかぁ……。
 それなら、まぁ、そうだな。




「じゃあ受けてあげてもいいですよ」

「本当に?ありがとうユッキー!」





 曽根崎さんが目の中にハートを浮かべる。俺は、「なんでも言うこと聞いてくれるのかぁ。でへへへ」なんて独り言を呟きながら、窓ガラスに目を向けた。



 目線のすぐ先には、俺と曽根崎さんが働いている会社の高いビルが見えた。








 ————さて。どうせ脇役フツメンには興味ないであろうみなさーん!まぁ自己紹介させてください。



 俺の名前は行平(ゆきひら)。
 通称ユッキー。

 多分みんな苗字覚えてくれないと思うから、ユッキーでいいよ。




 千葉県出身で、去年から海外赴任になった26歳だ。ちなみに一緒にランチをとっていた曽根崎さんは、秋田県出身の27歳で、俺と同じく去年から海外赴任になったバリバリのキャリアウーマンだ。




 と、いう説明でわかる通り、俺は今海外で働いている。所属会社はかなり大手の会社で、給料は申し分ないほど貰ってる。




 で、だ。

 うちの会社は海外に大きなビルがいくつかあって、俺はそのうちの「第二ビル」で働いているのだが、この第二ビルを経営している社長の秘書兼補佐が、曽根崎さんの言っていた「藤堂さん」という人なのだが————。





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