♥の女王と冷たい番犬

game 4










⬛︎俺の過去は ほとんどが ロマンチックだ⬛︎








 寒くて暗い。
 随分深いところに落とされたらしい。俺は膝を抱えながら、上を見上げた。丸く切り取られた光の中から、ひそひそと、無邪気なこども達の声が聞こえる。全員自分と同じ年か、一つ下か上ぐらいの小学生だ。





「このまま放っておいたら、あの子死ぬかな?」
「どうだろう、でもこのままだと死ぬかも」
「死んでもいいんじゃない?」
「確かに。だってこの子って、半分変な血が入ってるんでしょ?」
「汚いよね」
「そうだね汚い」
「綺麗にしなくちゃね」
「そういえば、お屋敷の中に綺麗な鳥が入ってるかごがあったよ」
「閉じ込めてるの?」
「そう、閉じ込めてるの」
「この子にそっくりだね」
「ねえ、その綺麗な鳥の血で、この子を清めてあげようよ」
「そうだね。そうしよう」
「でも、それでもだめだったら?」
「そうだね、そのときは……やっぱり」



 そのときは?



 その言葉の続きを知りたくて、井戸の底にいる小さな俺は目を見開いた。でも、聞こえなかった。




 それから数時間後。



 こども達の無邪気な声が聞こえてきた。
 顔をあげると、バケツのようなものを持ってる親戚のこども達がいた。



 ……やめて。



 バケツの中のものを想像して、俺は首をふるふると横に振った。


 やめて、お願い。
 誰か、助けて。
 誰か。
 誰か。




 瞬間、赤くて、生暖かいものが井戸の上から降ってきて、肌にびちゃりとかかった。



 こども達の楽しそうな笑い声が、井戸の中で反響した。




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