優しい獣・Ⅴ[全完]

私が帰宅したとき、屋敷に未来と玲人はいなかった。

お爺さんにふたりの行方を問えば「躾」だと言い、夕飯は抜きらしい。
随分子供っぽい躾だと笑う私に、


「お前も悪さをすれば夕飯抜きだ」


見事な灰色の髪と髭を僅かに揺らしながら笑った。


それでもこの屋敷に出入りする人は喧嘩が大好きなようで、昔の何かを思い出すのかどこか浮ついてる。


「ふたりの喧嘩を見たかった」


とか、


「結局どっちが勝ったんだ?」


とか。


煙草の変わりに、口内で飴を転がす本郷さんにふたりの怪我の具合を尋ねても「たいした事ない」って言うけど・・・。

0
  • しおりをはさむ
  • 2060
  • 1624
/ 431ページ
このページを編集する