優しい獣・Ⅴ[全完]

扉が閉まることを初めて知った。


これから何をされるか考えなくてもわかってしまって、悲鳴に似た声をあげたけど。


「俺がお前に惚れたんじゃない」

「ちょっと待っ」

「お前が俺の中に滑り込んできたんだってこと、忘れんなよ?」


ぴたりと締まったガレージの扉。
耳を澄ましても、もう蝉の声なんてまったく聞こえなくて。


外界から遮断された真っ暗闇の中。


「・・・っんん」


私は太陽の化身のように炎を吹き上げ、蝉の代わりに恋の調べを響かせた。

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