優しい獣・Ⅴ[全完]

その蝶を一瞬でも揺らすことが出来た自分を嬉しく思うし、


「・・・わかってる」


胸の動きに反して弱々しい言葉を吐く本郷さんを見れば、もっともっと。



「全然わかってない」

「イッカ?」

「あんまり『玲人玲人』って言ってると、本当にそっちに行っちゃいますよ?」



もっともっと揺らしてやりたいと思う。




突然生まれたサディスティックな気持ちと、思いっきり見開かれた本郷さんの瞳。


宇宙にでも飛んで行く気?と、問いたくなるほど揺れ動く翅に、口の両端が持ち上がってしまうのを止められない。



そんな私を見た本郷さんは、私の視線を感じまくっていただろう胸元を隠すように衣服を手繰り寄せ蝶をしまいこむ。


そして、


「申し訳なかった」


私の足を覆うギブスに血で滲む唇を寄せ、そこに赤い刻印を残した。

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