優しい獣・Ⅴ[全完]

私と本郷さんの間にあったカーテンが消えた。

本郷さんに対する看護士の対応は仕事になり、私はいつも忙しいこの人を独り占めしているかのような気分になる。



「じゃあ、あのバイクは五十嵐さんのものなんですね」

「そう」

「怒ってない?」

「怒ってるから見舞いにも来ない」

「・・・・・・」



ベッドに寝そべって見つめる先。
膝の上にパソコンを乗せて、両手の人差し指だけでキーボードを器用に叩く人の姿。



「廃車、ですか?」

「っぽいな」

「・・・・・・ちなみにそのバイクって」

「高くは無ぇけど、アイツが高校の時から乗ってるヤツだ」

「・・・・・・」



優しさと嘘を紡ぐ唇が、真実を伝えてくる。

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