城 3 <現在修正中>

エピソード5 熱情

 俺はーーー…
 自分で『告白』の予定を立てたその日の決行の日のために、ギリギリまでバイトを増やして働いた

 それは…卒業式前日だ
 彼女は総代として式典に出る
 そうに決まってる
 
 でその後ーーーーー・・・・・!
 <次の日>
 人がザワザワしているその混乱状態に乗じて打ち合わせ通り箏を連れだし地球に向けたシャトルに乗船する

 2人分の搭乗チケット代や<逃走先>ーーー…
 アッチでの衣食住、仕事先のアタリもすでにつけた
 なにも無一文で見知らぬ土地で彷徨う訳じゃない
 実はさーーー…!
 バイト先の飲食業の本店…ミシュランの星付だぜ?
 そこがさ〜
 地球のフランスにあって、でーーーー…!

 ”まだマスメディアに発表前なんだがーーー…
 南フランスに新店舗をオープンする事になったから是非フロアマネージャーとして行かないか?
 きっと大いに話題になり人々の耳目を集める事受け合いだ
 銀河中から観光客が押し寄せてやりがいが有るだろう

 君だったら雰囲気が神秘的だし人当たりもいいしカンもいい…
 どこだって悠々生きて行けそうだ
 ーーー正に適任だろ?
 私はそのポジションに君を推薦してて、本店も凄く乗り気だ
 君さえO.K.だったら是非この話を受けて欲しい
 ウンと言えばすぐに決定だ”
 
 …そういう話が店長から直接俺にあったんだ

 フランスなら音楽の勉強も出来るだろ?
 普段は長閑な環境…
 ゴッホやその他が絵に描いた土地でノンビリ暮らしてさ
 美味い料理に美味い酒…
 美味しい空気

 都合のいい時は大都会に出てさ
 音楽以外ーー
 精神的糧になりそうな本場の本物の美術も毎日幾らだって勉強出来る

 ホント……願ったり叶ったりだ
 俺は未来の温かな家庭を想像してボーーッとなった

 だが……
 それにつけても何をしても先ずは”金”だ

 先立つモノーーーーー

 支度金がいる
 箏にそんな苦労はかけさせられない

 だからーーー俺はトコトン働いた
 結果…
 愛する女性ーーーー…
 箏との時間は目に見えて削られていった

 がくんがくんと音がするかに減っていった

 会いたいのに会えない
 …
 

 時間が無くって
 以前みたいにノンビリ…ピアノの長椅子に座って話し込むこともなくなった

 バイトが終わって……
 全てが終わると殆ど深夜だ

 短い休み時間には必ず電脳の連絡を入れていたけれどどうしても短くせざるを得ない

 素っ気なく映ったのか……
 箏からの返信も同じ様になっていった

 胸がチクチク痛んだがどうしようもない
 会って話がしたい
 
 大好きだよって体が折れそうな程にギュッと抱き締めたい!
 
 会いたくても会えない
 我慢するばっかりで……
 俺は<箏不足>で

 その分 益々激しく彼女が欲しくてたまらくなった


 顔中燃えるようなキスをして…
 夢中で喰い尽くすように求めた
 

 『熱情』の後…
 フッと意識が遠くなりつい微睡んでいたことがあった
 ハッと…気がつくと腕の中に箏が居ない!
 どこだ
 どこに行った?

 するとその時…微かに
 リビングからピアノの音がしたんだ
 
 大慌てて彼女の部屋からーーー着衣もそこそこに駆けつけると…
 いつものピアノ用長椅子に座り、ポツンと灯りもつけず薄暗い部屋で鍵盤に向かう箏が居た
 鍵盤が奇妙に白く見えた

 『良かった…』
 
 俺はフワフワ−っと…ヘナヘナ〜全身力が抜ける程ホッとして…

 「箏?」

 『どうしたんだ?』
 …安堵の余り彼女の背中からギュッと腕を回し、優しく肩を抱いてチュッと頬にキスをした

 てっきりーーー…
 『んもう』…て、くすぐったそうに笑って振り向いてくれると思ってた
 俺の大好きな飛びきりの笑顔で…!


 ところがどうしてか
 『あれ?…』

 反応がない
 返ってきたのは〜…予想外の
 フーーーッと悲しげな…切なげな長い溜息だった

 「どうしたんだ?」
 「…別に…何でも無いの」

 俺の腕の中で箏の声は悲しげだった

 そうだ
 箏は孤独で寂しかったんだよ
 俺ばかりが一方的に気持ちを押し付けていた
 不安をわかってやれなかったんだ

 彼女は散々噂好きの教師や友人達から物見高い下品なやっかみ混じりの噂の的に晒されていたろう
 それに1人で孤独に耐えていた

 休み時間もそうそう会える訳じゃない
 早朝バイトのせいでーーー登校や…
 今思えば帰る時間すらこの頃はバラバラだった

 話なんて……
 もう真面に暫くかわしてなかった
 その事に全然気がつかない俺がいて…

 守るも何も”放置”……そのものさ




 自分にとって
 「世界中で一番大切な人」の気持ちも考えずに……

 っったくーーーホ〜ント…男の言葉なんかいい加減で

 都合良く脇見だらけで馬鹿みたくいい気なモノさ
 お笑い草だぜっっ!
 

 俺達の住むスペースコロニーでは卒業式は『夏』
 〜新学期は九月始まりだからな?



 ーーーいよいよ迫ってきたある日




 予想外の『その日』がやって来た





 「もう別れましょう」


 箏の方から静かに切り出された


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