野良猫サーカス 2 【完】

★★ /いざ、尋常に。






そして、迎えた体育祭当日。





生憎の曇り空だが、体育祭をやる日としてはベストなのではないかと思う。



今日は残暑もそんなにきつくないし。よかった。炎天下の中やる羽目になったら私は体育祭放棄していたかもしれないし。本当によかったよ。



で、今の私はと言うと。




「み、美琴さん、カッコいい……!!」


「その辺の男よりカッコいいわ…」


「惚れるっす!!」


「あぁ、その足で俺を踏んで……!」



おい、なんか最後なんか変なの混じってたぞ。



誰だよ今の。やめろよ。私にそんな趣味はない。



粟立つ鳥肌に腕を摩(さす)る。




そう。今、私は白ランを身に纏い、教室の中心に立っていた。



長い髪は一纏めにくくってポニーテールに。白ランの袖を肘まで捲って、中にはこれまた白いTシャツを身に着けていた。



ボタンは全開。だって暑いし。



因みに長ランなのは団長だけで、それ以外の学ランをきる副団長はいたって普通の丈だ。




にしても、学ラン暑い。死ぬ。



周りの声を無視してぱたぱたと手で仰いでいれば、挟むように左右からドスンと衝撃が飛んできた。うっ、腹が……。



「遼ちゃん、カッコいいカッコいい超カッコいい!!もう惚れちゃいそう!」


「やっぱりわたしの目に間違いはなかったわ…!!最高よ、美琴さん!!」


「……あっそう」



何かもう、怒るにも怒れないよねこれ。別に怒る気もなかったけどさ。



つぅ、とこめかみを滑り落ちる汗を乱雑に腕で拭う。



「はぅ」「美し……」「死ぬ」とか言って倒れてく奴はもう知らん。病院行ってこいや。




何気なく視線をずらすと、写真を撮ろうとこっちにカメラを向けてる女の子がいた。



……あー。



「ごめんね」


「えっ、!!」



腰にへばりついていた撫子と委員長の二人を引き剥がして、その子のカメラを手で覆う。



その女の子は、顔を真っ赤にして私を見上げていた。



うーん。まるで一色たちの時みたいな反応されても……。



まあどうでもいいや。今はこっちが先決。



私は顔を真っ赤にしたままプルプル震えてる女の子に苦笑を向ける。



「あのさ」


「へあい!!」


「(……変な返事)できれば、写真は控えてほしいんだ」


「え」



そんな残念そうな顔されてもね……。



でも、写真は嫌なんだよなぁ。



うーん。仕方ない。ここは奥の手だ。




女の子に少し顔を近づけて、眉をハの字に垂らす。



そして、少し首を傾げて。




「……だめ?」




そう、問いかけた。




昔、“あの子”に教わったんだ。



困ったときは、こうすればいいよって。こと細やかに。



いやあ、こんなところで役に立つとは。あの時面倒臭いとか思いながらもちゃんと聞いておいてよかった。




ただ。




「ふっ、う、うぅ……」


「ちょ、しっかりして!」


「駄目だ、美琴さんの色気に当てられて鼻血出しながら気を失ってる……」


「くっ、なんて破壊力だ」




こんなことになるとは思いもしなかったけどな。




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