野良猫サーカス 2 【完】

★★ /赤色の意味







話し終わった酒井の顔は、どこかすっきりしていた。



……そんなことがあったのか。



だいたいは予想できていた。だけど、思ってもみないこともたくさんあって。



酒井だけじゃない。私は、“青”の過去に触れてしまった。



酒井は「ひっでえ話だろ?」と苦笑いを浮かべる。



「いくら傷ついたからって、他の奴を傷つける理由にはならない。そんな当たり前のことがわかってなかったんだ」



……あぁ、そうだね。



わからないんだ。当事者は、そんな当たり前のことに気付けない。



いつまでも引きずられて、自分の殻に閉じこもればいいって思ってる。



「だけど、お前は気付いただろ?」



でも、酒井はその殻を壊した。



前を向こうと、自分の殻をぶっ壊して、一歩踏み出した。



それってすごいことだと思うんだ。




―――――私には、できない。




ふっと瞼を軽く伏せてから、開く。



ねえ、酒井。お前はさ、自分のことをそんな風に言うけど、私はそんなお前のことを心から尊敬するよ。



大好きだった人がボロボロになって、信じてた人には裏切られて、それでも立って前を向く酒井が、私は眩しくて仕方ない。



「ねえ、酒井」


「……何だ?」


「お前は、すごいね」


「え?」



パチパチと瞬きを繰り返す酒井に、もう一度「すごいよ」と繰り返す。




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