ホラー短編集/家族愛編【完】

第参話/1枚のカード

第参話/一枚のカード①

東京都在住 中里ミチヨ(38歳)



”我が家の珍品にまつわるエピソード”

それは、私の母が小学校5年の時、国語授業におけるある作文のテーマだったそうです。

家から持参した”珍品”をクラスのみんなの前に見せて、作文を読み上げる…。
私の母はその作文の授業で、ある転校生が学校に持ってきた珍品をめぐった、とても不思議な体験をしたと言うのです。


...


その日、母は急に私の住む都内のアパートを訪れたのです。
お互いの近況報告をひと通り済ませると、母はおもむろに切り出しました。

「ミチヨもだいぶ落ち着いてきたみたいだからね…、今日は聞いてもらいたことがあるわ。ずっと前から話そうと思ってきたことなのよ」

母がこういって改まるのは珍しいことでした。

父と離婚して10年以上が経過し、起業が失敗して自己破産した私も何とか一段落のことろまでたどり着いた今、何か伝え残さなければならないことがあるんだろう…。
そんな思いは伝わりましたが、まさかあんな体験が母にあったなんて…。


...


そして母の口から飛び出したのは、小学生だった頃の話だったのです。

「あれは私が小学校5年の時だったわ。”我が家の珍品"にまつわるエピソード”っていうテーマで、作文の授業があってね。私は日めくりカレンダー365日全部めくり終わった後の台紙を持っていったの」

母の家ではハガキ程度の大きさの日めくりカレンダーを居間の柱に吊って、毎朝、家族5人が順番に前日の曜日をめくるのが習慣だったそうです。

そして、翌年の元旦、前日、つまり前年の大晦日をお父さんがめくり、無地の台紙に家族みんなで過ぎた1年について一言づつ書き込み、その台紙は毎年保存するという訳です。

母は、そんな我が家の日めくりカレンダーの習慣を作文にして、学校には昨年の台紙を持って行ったそうです。
そして、見事、クラスの最優秀賞に選ばれたんです。

ところが、母はそのことで、いじめっ子グループから妬みを買い、嫌がらせを受けることになりました。

いわば、母の不思議な体験はそれがきっかけとなったのです…。







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