ホラー短編集/家族愛編【完】

第六話/タイムカプセルへの願い

第六話/タイムカプセルへの願い①


神奈川県在住 柏木美穂(37歳)



1年前…。
当時の私は今年中学校2年になった長男をめぐって、ある悩みを抱えていました。

その日は長男が万引きで補導されて、今学校側の処分を待っているところだったのです。
夫は船乗りで家におらず、メールで一報を入れましたが、何分心細いので同じ県内に住む私の母には、その日のうちに家に来てもらいました。

...


「ゴメンね、お母さん…。全くみっともないったらありゃしないわ。なんか翔太、常習の可能性もあるらしいの…」

私はテーブルに両肘を着いて頭を抱えていました。

「美穂、落ち着きなさい。翔太にはよく話を聞くのよ。愛情を持ってね…」

その時、まだ細かく話を聞き質す段階ではないと判断し、長男の翔太は2階の自室で一人にしていました。

「ねえ、美穂…。圭祐さんもいないことだし、翔太がこういうことになった今、あなたには告げなければならないことがあるの…」

母はおもむろに、あらたまりました。
そして、”あのこと”を知らされたのです。


...


「…お父さんが事故で急に亡くならなかったら、あの人、自分の口で美穂には伝えたと思うけど…」

父は2年前、トラックとの交通事故に遭い即死しました。
ちょうど定年を間近かにした父とは予期せぬ決別で、ただでさえ無口だった父とは、もっと話をしておけばよかったと悔やんでいます。

しかしこの夜、母の口から父が生前に娘の私へ告げるはずだった言葉を聞くことになります…。






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