ワケありSS! 【不定期更新】

わしゃわしゃと、無遠慮に頭を撫でられる。

いつもはこんなこと絶対しないくせに、急に優しくされて流れる涙の量が増す。



「そもそも好きなヤツがいるなんて聞いてねーぞ」


「……言って、ない、」


「だろーな」



適当な相槌でさえ、綾兄の声音は普段の会話の数倍柔らかい。

私の頭を撫でる手は一定の強さとリズムで、粗雑なのにあやすような触れ方だった。

泣き続ける私に、綾兄は暫く黙ったまま。

そこから何分経ったのか分からなくなった頃、彼は溜め息混じりに口を開いた。



「つーか、見る目の無ぇ男のためにいつまでも泣いてんじゃねーよ」


「、」


「お前のこと泣かしていいのは俺だけだって、昔っから言ってんだろーが」



きっと慰めだったんだろうけど、綾兄の言い分に思わずふっと笑いが零れる。



「…なにその俺様理論」



確かに小さい頃から、私が泣くたびに同じようなことを言っていたけど。



「なんで、綾兄はいいの?」



普通、泣かせないようにするのが兄なんじゃないだろうか。

そんなことを考えながら綾兄を見れば、彼はゆるく口角を上げる。



「ンなもん、俺がお前の兄ちゃんだからに決まってんだろ」


「…お兄ちゃんは、妹泣かせちゃダメでしょ」


「ウルセーな。とにかく今は泣き止んどけばいいんだよ」



相変わらずの身勝手な物言いに、私からは涙の代わりにくすくすと笑いが落ちる。

綾兄は私の目元に残った涙の雫を指先で払って、「止まったな」と満足そうに笑ってみせた。





『もしも綾がお兄ちゃんだったら【おまけその2】』

仮に失恋や悲しい出来事で泣いたりしたら、その時は不器用なりに慰めてくれます。

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